幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
王妃様は微笑んで首を横に振った。

「少し休みます。何かあったら起こしておくれ」


何か?

この静かな修道院では、何も起きはしない。

きっと千年先まで。



けれど


そんな場所など、この世のどこにも存在しないのだ。


一見、世俗とは無縁のようなこの修道院にさえ、時代の嵐が近づいていた。


翌朝、王妃様の髪を梳かしていると、顔を強張らせた修道院長がやって来た。


「王宮より御使者が来ております」


「そう。お会いしましょう」


「それが……」

院長は言いにくそうに言った。

「門の外にも三十人ほど」


「迎えに来たのですね?」

王妃様は、何もかも悟っているかのように静かに言った。

「身仕度を終えるまで少し待って下さい」

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