幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
急に修道院側の回廊が、騒がしくなった。


来たわね。


バタバタと走る足音が近づいて来る。


「ア、アレクサンドラっ!」

ウイローミアが、息せき切って駆け込んで来た。

「た、た、大変よ! ドラゴンが……ドラゴンが……」


「どこに?」


「前庭に!」


「行くわ。元気でね」


あたしは、ウイローミアを抱きしめて頬にキスをした。

そして、スカートをつまみ上げて裾を持ち上げ、前庭に向かって走った。



前庭は大変な騒ぎになっていた。


それも無理はない。


ホークは、男性が入ってはいけない内門の中に、黒い鱗のドラゴンを背に立っていたのだ。

しかも、鎖帷子を着込んで腰に長剣を下げ、腕と脛(すね)には鉄製のプレート防具をつけている。

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