幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
ジャルグは身震いすると、でかい牡猫ほどに大きくなった。


――壁沿いに連れて来る。準備しとけ


ジャルグは音もたてず、床の上を滑るようにヒュドラに向かって走って行った。


「サンディ嬢ちゃん! 無茶するな!」


あたしは、引き止めようとするマクリーンの腕に王妃様を押し付けた。


「マクリーン卿、王妃様をお願い」



ジャルグはヒュドラの後ろ側に回り込み、炎の息を吐いた。


大蛇の尾先が焦げたらしい。


ヒュドラは喉元でギーっと軋むような音をたてて、七つの首を激しく振り回した。

ヒュドラを押さえ付けようとしていた男達は、振り払われてしまった。


「さあ、おいで」


あたしは<扉>が織られた布を手に、誰もいない壁の方を向いて待った。

ジャルグが壁と平行に走って来た。

その後ろを怒り狂ったヒュドラが追いかけて来る。


< 256 / 289 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop