幻獣のタペストリー ～落ちこぼれ魔導士の召喚魔法～

王妃様がひざまづいて、手ずから傷ついた男達に水を与えている。


ああ、あたしもお手伝いしなきゃ


――おい、いいのか？　魔導士の姉ちゃんが逃げるぜ


ジャルグの言葉に、あたしは顔を上げた。


玉座の横にいたレディ·クリスタルが、静かに後ろに下がっている。


「ダメ！　ジャルグ、捕まえて！」


あたしとホークは、ジャルグの後を追って走った。


玉座の脇の方には、秘密の通路があったらしい。

レディ·クリスタルは、その通路の小さな入口に身を屈めて入ろうとしたところをジャルグに邪魔されたようだ。

あたしとホークが駆け付けた時には、ジャルグを口汚く罵っているところだった。


「逃がさないわよ！」

あたしは後ろからレディ·クリスタルに飛びつき、あたし達は一緒に床に倒れ込んだ。


「何をするのよ、このバカ娘！」

レディ·クリスタルは、あたしを引き離そうともがいた。