幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
まばゆい光と共に、ユニコーンが現れた。


「おいで、ユニコーン」


ユニコーンはあの日と同じように、冷たい鼻面をあたしの手の平に押し付けた。


「見て。みんな苦しんでいるの」

あたしはユニコーンのたてがみを撫でた。

「あんたの角があれば助かるの」


ユニコーンの黒い瞳があたしを見つめた。


「ゴメンね、ゴメンね……あんたの角をちょうだい」


あたしは唇を引き結んで、ユニコーンの首に短剣をあてた。


ためらってはダメ

ためらったら、苦しい思いをさせてしまう。


指が、手が、体が震える。


「アレクサンドラ」

王妃様が、あたしの震える手をそっと握った。

「短剣を貸しなさい。わたくしがやりましょう」


首を横に振った途端、あたしの目から涙がこぼれた。

< 266 / 289 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop