幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「いいだろう――ホーク、リーに今の噂を流させてくれ。もう少し尾ヒレを付けてな」


「尾ヒレ、ですか?」


「王妃が世にも珍しい薬を手に入れて、故国の民にも分けてやりたいと願っている――そんなところでいい」


「とんでもないっ!」

髭の伯爵が、椅子をひっくり返しそうな勢いで立ち上がった。

「みすみす敵を利していかがなさいます!」


「落ち着け、ソーン伯」

王様はヒラヒラと手を振った。

「当然、我が舅殿は王妃を里帰りさせようとするだろう。だが、とんでもない。街道には山賊が出るのだ。余の大事な妃を旅には出せぬ」


「ああ……もちろん父王様は、可愛い娘御のために山賊を"討伐"して下さるでしょうね」

ホークがニヤリと笑う。


「"討伐"は念には念を入れてやっていただかなくては。そうだな……半年ほど何事もなく商人達が通行できるくらいでないと」


――やればできるじゃねぇか

ジャルグがボソッと失礼な事を言う。

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