幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
アルス伯爵イアン·グレイホークが真夜中に帰宅した時、
若きアルス伯爵夫人は、ナイトガウン姿のまま自分の工房で眠り込んでいた。
夫人の回りには図案を書き留めた紙や色とりどりの糸が広がっていた。
夫人の手元を照らしている光は、蝋燭ではなく――魔導士たる伯爵夫人に相応しく――サラマンダーの発する赤い炎だ。
ホークはしばらく妻の寝姿に見惚れていた。
――遅かったじゃねぇか、お師匠さん
サラマンダーは片目を開けて、ホークを見上げた。
――奥方は待ちくたびれていたぞ
「思ったよりも長びいてな――アレクサンドラ、こんなところで寝ていたら風邪をひくぞ」
――起きそうもねぇな
「仕方ない。抱いて連れて行くか」
――じゃ、オイラは帰らせてもらうぜ
サラマンダーはそう言って、吊してあるタペストリーに向かって壁をよじ登った。
「ジャルグ、サラマンダーの王よ」
ホークがサラマンダーを呼び止めた。
若きアルス伯爵夫人は、ナイトガウン姿のまま自分の工房で眠り込んでいた。
夫人の回りには図案を書き留めた紙や色とりどりの糸が広がっていた。
夫人の手元を照らしている光は、蝋燭ではなく――魔導士たる伯爵夫人に相応しく――サラマンダーの発する赤い炎だ。
ホークはしばらく妻の寝姿に見惚れていた。
――遅かったじゃねぇか、お師匠さん
サラマンダーは片目を開けて、ホークを見上げた。
――奥方は待ちくたびれていたぞ
「思ったよりも長びいてな――アレクサンドラ、こんなところで寝ていたら風邪をひくぞ」
――起きそうもねぇな
「仕方ない。抱いて連れて行くか」
――じゃ、オイラは帰らせてもらうぜ
サラマンダーはそう言って、吊してあるタペストリーに向かって壁をよじ登った。
「ジャルグ、サラマンダーの王よ」
ホークがサラマンダーを呼び止めた。