幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「まあまあ、奥様」

メイド頭のミリーがお茶の用意をしながら笑う。

「サンディお嬢様におっしゃったところで、無理というものですよ」


「そうねぇ……あの煮え切らない息子が、さっさと決めてくれればいいのだけれど」


あたしは驚き、目をしばたいた。

あのホークに煮え切らないところなんてあったかな……?


「奥様は、望んでる方がいらっしゃるのですね?」


あたしが言うと、先代伯爵夫人はうなずいた。


「わたくし、というよりもイアンの方が望んでいるのよ」


ホークには好きな人がいるんだ!


「なら、どうして――?」


あたしは言いかけて口を閉じた。

馬鹿ね

あたしのせいに決まってるじゃない

あたしが一人前の魔導士になれないから……

< 40 / 289 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop