幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「さあ、お二人とも、お茶ですよ」
ミリーが明るく言う。
「周りがなんと言おうと、伯爵様はご自分の思った通りになさるんですから、お二人が何を言っても無駄です」
「それもそうね。あの子がそんなに悪趣味なわけがないわ」
先代伯爵夫人は、そう言ってあたしの方を見た。
「お茶にしましょう、サンディ――まあ! そのどうしようもないレースを綺麗にしてくれたのね!」
あたしは、舟型の糸巻きをくぐらせながらうなずいた。
「あたし、こういう事は得意みたいで」
「わたくしは駄目。上手く出来た試しがないわ」
それなら、どうしていつも編んでいるのだろう?
不思議に思っていると、先代伯爵夫人はクスッと笑った。
「亡くなった夫のせいよ。
あの方は、求婚している時にわたくしがいつもレース編みを持っているのを見て、わたくしがレースを編むのが好きだと思い込んでしまったの。結婚してからは、凝った細工の糸巻きや珍しい糸を贈られたわ。
でも、レース編みが好きだったわけではないの。殿方とお話するのが気恥しくて、何かを持っていなくては間が持たなかったからなのよ」
ミリーが明るく言う。
「周りがなんと言おうと、伯爵様はご自分の思った通りになさるんですから、お二人が何を言っても無駄です」
「それもそうね。あの子がそんなに悪趣味なわけがないわ」
先代伯爵夫人は、そう言ってあたしの方を見た。
「お茶にしましょう、サンディ――まあ! そのどうしようもないレースを綺麗にしてくれたのね!」
あたしは、舟型の糸巻きをくぐらせながらうなずいた。
「あたし、こういう事は得意みたいで」
「わたくしは駄目。上手く出来た試しがないわ」
それなら、どうしていつも編んでいるのだろう?
不思議に思っていると、先代伯爵夫人はクスッと笑った。
「亡くなった夫のせいよ。
あの方は、求婚している時にわたくしがいつもレース編みを持っているのを見て、わたくしがレースを編むのが好きだと思い込んでしまったの。結婚してからは、凝った細工の糸巻きや珍しい糸を贈られたわ。
でも、レース編みが好きだったわけではないの。殿方とお話するのが気恥しくて、何かを持っていなくては間が持たなかったからなのよ」