幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
すると、ミリーがケラケラと笑った。


「奥様がグチャグチャにしたレースを、毎晩わたしが編み直したものですよ」


ええっ!


「でね、夫は死の床で、わたくしに『ミリーのレース編みは職人並に上達したな』と言ったの」

先代伯爵夫人は笑いながら目を潤ませた。

「人が悪いこと! それから、わたくしに『愛しているよ』と言って逝ってしまわれたわ」


「素敵なお話ですね」

あたしの胸がキュンとなった。

そんなふうに暖かい愛情に包まれるって、どんなだろう?

「奥様が今もレース編みをなさるのは、伯爵様との思い出のためなんですね?」


「いいえ」

先代伯爵夫人はニッと笑った。

「何も知らないイアンが、糸を贈ってくれるからですよ」


あたし達はドッと笑った。


「楽しそうだな」

部屋の入口からホークが顔を出した。

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