幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「何がそんなに面白いのです?」


「お帰りなさい、イアン」

先代伯爵夫人が言った。

「お客様は?」


「客間でお茶を飲んでいますよ。わたしは母上に帰宅の挨拶をと思いまして。アレクサンドラも一緒だったのですね」

ホークはあたしの手元を見た。

「レース編みに興味があったのかい?」


「えっ? ええ! 奥様に教わっていたの」


先代伯爵夫人がお茶にむせて咳込んだ。

ミリーが笑いを噛み殺しながら、夫人にナプキンを手渡す。


「大丈夫ですか、母上?」

「え……ええ、大丈夫ですよ。ありがとう。それより、領地内に問題はなかったのでしょうね」

「ありませんよ。ただ――」

「ただ、何です?」

「王のご前に伺候せねばならなくなりました」

「どうしてまた……」

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