幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
うん

でも着たいんじゃなくて、織りたいの。


「大した物ではないわ。宮廷では平均的な服装よ」


服装自体はどうだっていい


「その赤い布地は何ですか?」

「これは外国産の布なの。製法は門外不出だという貴重な物よ」


全然、平均的じゃないじゃない!


このどことなく優越感に満ちた物腰が『宮廷風』というものなら、確かに先代伯爵夫人が馴染めないと言うのも頷ける。


あたしは『本当に素敵』と言って、自分の席に座った。

すぐ隣はレディ·クリスタルのお付きの女性で、反対隣はパトリックだった。


「こんばんは、パトリック」


「あ……こんばんは、お弟子殿」

パトリックの顔が真っ赤になる。

「覚えて頂いて光栄です」

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