幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「伯爵様なら、子供達を受け入れてくれるのは間違いない。でも、そのせいで王に疑いを持たれるかも知れない」


「だって、子供だよ? しかも領民の」


あたしの言葉に、ショーンは首を横に振った。


「真実はどうであっても関係ないんだ。猜疑心は猜疑心を呼ぶ。少しでも疑いを持たれれば、伯爵様は失脚する。この村だって戦火に包まれる事だって考えられる」


「そんな……」


「僕らが生まれた頃にも、国中でそういう事があったって聞いたよ。ほら、前王が死んだ時さ」


前の王様――つまり、今の王様の父上が亡くなった時、この国は内乱状態になった。


幼い王子を擁した宰相、政治的実力者だった王弟、王の姉を娶っていた隣国の国王――それぞれに利害が一致した貴族達がついて、王位を巡った争いが続いたという。


「王都が焼け野原になったってのは、あたしも聞いた事あるけど」


「普通の農民が戦に巻き込まれて死んだ村もあるんだって。父はそれを知っているから、うちの縁者のために、この村の人達を危険に晒せないって言うのさ」


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