幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
――半開きの黒い扉を織るんだ。オイラ達の世界への入口だ。それがないと……


ないとどうなのだろう?


――あんたの魔力を辿って帰るしかない。嬢ちゃんの体にはひどく負担になるはずだ


サラマンダーの体は全て織り上がった。

今は布の中でグルグルと尻尾を追い回している。


あたしは、なおも背景を織り続けた。


何だか手元が暗くなって来た。

どこかでドアを叩く音がする。


「アレクサンドラ!」


ホーク?


――やれやれ、お師匠さんのお出ましか

サラマンダーが目をクルリとさせて言った。

――消される前に帰るとするよ。嬢ちゃん、ちょっくら御免よ


サラマンダーはあたしの手を這い上がり、二の腕に鋭い歯を立てた。


痛い!


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