痛いくらいの好きを君に。
第一章
プロローグ
私には仲の良い幼なじみがいる。
その幼なじみは、どちらかといえばチャラくて、どちらかといえば不真面目で、おまけに楽天的な大雑把で、でも一緒にいると楽しくて飽きない、……そんな幼なじみ。
「奈子ー…」
『んー…?』
「俺のこと好きぃー?」
『…………うん、好きだよー』
「その間は何?」
『さあー、何でしょう?』
こんなノリはいつものことで、あしらいかたも知っている。
好きか嫌いかで問われたら、そりゃ好きだ。
けど、loveとlike で問われたら……わかんない。
「奈子……キス、しよ?」
『………………空耳か』
「キス、しよ?」
『…………なんで?』
「なんでって、いつもしてたじゃん」
『……昔々のそのまた昔ね』
「奈子、俺とキスするの嫌?」
『嫌とかの問題じゃなくて、…あたし達もう中学生だよ?』
「知ってる」
『子供じゃないんだから、この歳でほいほいキスなんてできないよ』
「いや、俺達まだ子供だし」
そう言って、大袈裟に笑う幼なじみ。
「だから、……奈子、キスしよ?」
『………………』
千尋の笑顔に弱い私は不覚にも頷いてしまった。
久しぶりのキスに変な動悸を覚えたのは、きっと私だけだろうな。
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