痛いくらいの好きを君に。
千尋は学校でも結構目立つ存在で、友達も多いし、中々モテる。
それに比べて、私はどちらかと言うと地味な方。
友達はまあ多いと思うけど、千尋ほどではない。
幼なじみだけど、学校では余り喋らない私達。
理由は、幼馴染みであることを内緒にしたいから。
「じゃあ、また帰りにな。奈子」
『あー、うん…』
千尋が3-1と書かれた教室に入って行くのを見届け、私も自分の教室へと急いだ。
静かにドアを開くと、先生とバッチリ目が合う。
『お、はようございますー』
気まずそうに頭を下げた私に、先生は嫌みを含めて挨拶を返してきた。
「東城さん、おそようございます」
『……………あ、はは』
もう乾いた笑いしか出てこない。
私は足早に自分の席へ座った。
「さて、重役出勤の東城さんも来たことなので、そろそろ授業に移ります」
やっと先生の視線が私から黒板へと外れる。
遅刻してきたと言う罪悪感もあり、いそいそと筆記用具等を構える私。
そんな時、不意に前から声がした。
「また遅刻かよ、お前」
『またって何、またって…』
「今日も昨日も一昨日も、お前遅刻好きなー」
『好きで遅刻する奴はいませんけど』
私に話し掛けてきた男子、寺居琉太(テライリュウタ)はクラスの中で仲の良い友達の一人。
話もそこそこ合うし、一緒にいて気を使う必要がない男友達だ。