痛いくらいの好きを君に。
「奈ー々ちゃん!」
突如聞こえてきた元気な声に反応し、私は斜め前に視線を向けた。
『おはよう、文香』
「おはよーん♪今日もお兄さん達と登校?」
『…うん、そろそろ一緒の登校はやめたいんだけどねー。中学にもなって兄ちゃん達と登校ってどう?』
斜め前の席に座っていた女の子、津田文香(ツダフミカ)に問いかける。
「いいじゃんいいじゃーん、お兄さん達カッコいいし♪ね、百合ちゃん?」
と、前の席に座っていた苑田百合乃(ソノダユリノ)に話し掛ける文香。
「確かに、奈々子のお兄さんは二人ともカッコいいね」
軽く後ろを向いて微笑む百合乃。
うん、美人だ。
そんな事を考えていると、隣の席に座っていた男子が話し掛けてきた。
「奈々子の兄ちゃんって、絶対シスコンだよな!」
隣の席に座っている男子、内藤滉也(ナイトウコウヤ)は、私の机に割り込むように入ってきた。
「それも、極度なシスコン」
『そんなんじゃないしー』
「いいや、絶対そうだって!なぁ、琉太」
「まあ、どっちかと言えばな」
『だから、そんなんじゃないってばー!』
あまりにしつこい二人に、少し大きめな声が出る。
「東城さん、何か質問ですか?」
と、先生が私にするどい視線を向ける。
『あ、いや、そのー…』
言葉の出てこない私に代わり、琉太の前の席で百合乃の隣の席に座っていた男子が答える。
「すみません、先生。教科書のページ数を確認していたんですが、思いの外大きな声が出てしまいました」
男子の言葉に「そう?ならいいです」と笑って返す先生。
私は小声で前の前の席に座る高野玲(タカノレイ)にお礼を言う。
『玲、ありがと』
「バカ奈々子。話す時はボリューム落とせ」
と、冷たい視線を私に送ってくる玲。
『はーい…』
私は静かに返事をして教科書に視線を移す。
そこからは真面目に授業を受けた。