痛いくらいの好きを君に。

売店に到着した私達だったが、そこはすでに生徒でごった返していた。



「ちょっと遅すぎたか?」

「早くしねーとパンが売り切れるー!」

「とりあえず並ぶぞ」

『憂鬱だ…』



生徒が多すぎてパンが見えない。

パンが見えない=食べたいパンがあるか解らない。

………うん、一大事だ。

私は意を決してジャンプをしてみる事に…。



『む、無理…。見 え な い~~~~』



そんな私を見て玲が呟く。



「何やってるんだよ」

『え、いやー………ジャンプしたらパン見えるかなぁー。って…』

「こんな人混みで跳んでると危ないぞ」

『だってー』



と、言いながらもジャンプを続けていた私。

すると急に前後の生徒が活発に動くものだから、私はその反動で後ろへと傾く。



『あ、れ…?』

「っ!バカ…」



玲の少し焦った声が聞こえたかと思うと、別の声が頭上から聞こえてきた。



「大丈夫かー?」

『え?』



聞き覚えのある声に顔をあげる。



「奈子のドジ」



他の生徒には聞こえないくらいの声で千尋が呟く。



『ち、…』



『千尋』と言う言葉を飲み込んだ私。

千尋は後ろから私を抱きしめるようにして支えてくれている。



『ありがと、ございます…』

「なんで敬語?」



フッと目を細めて笑う千尋。

そんな私達の様子は注目の的になっていた。



「何あの子!?」

「相川くんが抱きしめてる!?」

「えっ!どうゆう関係!?」



次々に聞こえてくる声で我に返った。



『っ!』



急いで千尋と離れようと、千尋の胸を強く押した。



「え?」

『あっ…』



やばい。

思いの外、突き飛ばし過ぎた…かな?



『あ、りがと…』



それだけ言って、私はざわつく売店を後にした。
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