痛いくらいの好きを君に。

「奈ー子」

『…………………』

「奈ー子ー」

『…………………』

「なんで無視するわけー?」

『…………………』



保健室の当番である私と千尋は、二人並んで廊下を歩いている。

ことあるごとに千尋が話しかけてくるが、はっきり言ってうるさい。

それに、他の生徒からの視線が痛い。



「奈子ってば、聞こえてるだろ?」

『……………何』



余りのしつこさに、不本意ながらも返事をする。



「やっと、こっち見た」



と、千尋は嬉しそうに笑う。

だから、つられて私も笑顔になった。



「さっきまで機嫌悪かったのに、奈子笑ってるし」



私の髪をくしゃりと掴み、優しく微笑む千尋。
< 22 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop