モラトリアムを抱きしめて
私は一歩下がってしまったけれど、じっと睨むように兄を見つめた。

「元気そうで安心した」

額に汗が滲んでいるのが見える。


「謝っても済まされないし、普通の兄妹には戻れないだろうけど――

何かあったら、絶対に――

今度こそ守るから」

兄の言葉は表情とは裏腹に力強かった。


「約束する」


天涯孤独だと思っていた。

そう思うほど、乗り越えるべき壁が乗り越えられた。

血の繋がりなんてないほうがマシだと。

血は巡る。

命もまた。




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