モラトリアムを抱きしめて
幼い自分ではどうすることもできない事が多すぎて、小さなプライドと誇りを守るため生き急ぐしか方法がなかった。

あの頃の私を抱きしめて、わかったことがある。今だからわかる事。

私の恨みはだだ無いものが欲しかっただけじゃない。

欲しいものは沢山あった。足りないものも沢山あった。

けれど私はいくつもある道を悩みながら進みたかったんだ。

その時にしなくてはいけない事、その時にわからなくてはいけない事をリアルタイムに学び。

独特のモラトリアム感をその時に味わいたかった。

笑うのも泣くのも当たり前で。

心配される危なっかしい存在であることに気付かないくらい、鈍感でちょうどいい。

何をやっても消えることがなかった喪失感の理由がわかった気がした。


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