モラトリアムを抱きしめて
ドラッグストアを出ると小走りしている自分がいた。家からは五分ほどだが、一分でも早く帰ってあげたい。

辺りはすっかり暗くなっていた。

いつの間にか風が強く吹いていたらしく、慌てて出てきてしまったために防寒が十分でなかった私を、冷たい風が容赦なく突き刺す。

頭の痛みはゆるやかに治まりつつあった。

じっと身を固めてしまった私を少女は心配していたけれど、「大丈夫」と笑って言って家を出てきた。

ただでさえ心細いであろう少女をこれ以上、不安にはさせたくない。

足が重くなるほどの向かい風を押し退けて家に着くと、少女はまだお風呂に入っているようだった。そのまま脱衣場に行く。

買ってきたばかりの、生理用ナプキンとショーツをバスタオルの上にそっと置いて、脱衣場を出た。


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