モラトリアムを抱きしめて
「はっちゃん……で、どうかしら?子どもっぽすぎる?」
安易なあだ名だが、私が幼い頃よく呼ばれていたと思う。
私の問い掛けにハツミはあからさまに困惑し、そのうち何か怖いものでも見たかのように、表情を固めてしまった。
何か嫌な思い出でもあるのだろうか。からかわれるような名前ではないと思うのだけど。
見るからに繊細そうな年頃のハツミだから、何かあるのかもしれない。
「嫌?やっぱり子どもっぽいわよね……」
自分の名前を呼ぶのは少々照れくさいが、これと言っていいあだ名も思いつかず、普通にハツミまたはハツミちゃんでいいかな、と思いはじめた頃。
「はっちゃんでいいよ」
諦めたのかと思えば吹っ切れたように、ハツミは言った。それどころか、どこか嬉しそうにさえ見えた。
少女が何を思い、何を考えていたのかは私にはわからないけれど、少女が望むなら、何度でもそう呼ぼうと思った。
安易なあだ名だが、私が幼い頃よく呼ばれていたと思う。
私の問い掛けにハツミはあからさまに困惑し、そのうち何か怖いものでも見たかのように、表情を固めてしまった。
何か嫌な思い出でもあるのだろうか。からかわれるような名前ではないと思うのだけど。
見るからに繊細そうな年頃のハツミだから、何かあるのかもしれない。
「嫌?やっぱり子どもっぽいわよね……」
自分の名前を呼ぶのは少々照れくさいが、これと言っていいあだ名も思いつかず、普通にハツミまたはハツミちゃんでいいかな、と思いはじめた頃。
「はっちゃんでいいよ」
諦めたのかと思えば吹っ切れたように、ハツミは言った。それどころか、どこか嬉しそうにさえ見えた。
少女が何を思い、何を考えていたのかは私にはわからないけれど、少女が望むなら、何度でもそう呼ぼうと思った。