モラトリアムを抱きしめて
一目惚れして買ったにも関わらず、色が少し派手なのと、丈が意外にも短かったため、クローゼットに眠っていた物だった。

「これなら着られるんじゃない?サイズあまり関係ないし」

それに細身で色白のはっちゃんなら、よりこのワンピースが似合うと思った。


数分して照れ臭そうにリビングに入ってきたはっちゃんは私の想像通り、理想的にワンピースを着こなしていた。

足元は厚めの黒のタイツ。これは私のお古だけれどサイズは大丈夫そう。無数にあった擦り傷は隠れ、色の効果か細い脚をより引き締めてくれている。

その脚にはこのワンピースの丈が調度よかった。

しかし、近寄ってきたはっちゃんを見て自分の失態に思わず笑ってしまう。

「うわっごめん!中に着るもの出してなかったね」

ザックリ着られたVネックから白い肌が覗いていて、見るからに寒そう。

「キャミじゃ寒いかな?でも肌着じゃ変だしな……どれにしようか……あれ?そう言えば、はっちゃん」

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