モラトリアムを抱きしめて
ブラジャーとショーツのセットを綺麗にラッピングまでしてもらい、はっちゃんにプレゼントした。

それからにっこり笑ったはっちゃんは、小さな紙袋を大事そうに抱え放さなかった。

買い物を終えた私たちだけれど、デパートを隅から隅まで見て回る事にした。

平日のデパートは空いていて、二人だけの世界が広がる。

それは理想のデートプランを堪能しているような。

またはそれ以上。

夫には悪いけれど、異性とのデートでもこれ程楽しいと思える事はなかった。

何かが溢れだす。じわじわとゆっくり。

溢れだしたそれで満たされていく様を私は感じでいた。

どこまでも続く広い草原を好きな色の花で飾っているような。

決して枯れる事のない鮮やかさ――

美しくて優しい――


私は知らず知らずのうちに全てを脳裏に焼き付けていた。


最後にソフトクリームを食べて、夕飯の買い物をしてから帰る事にした。


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