モラトリアムを抱きしめて
「何言ってんのよ、全部お古じゃない」
それでどれだけ私が救われたか。おばちゃんにはわからないのかもしれない。
同情やお節介で救われる人間がいるということを。
おばちゃんは不思議そうな顔をしていたけれど、少し照れたように笑った。
「初美ちゃんは赤が好きだったわよね〜懐かしい。」
「そうだっけ?」
「ほら、覚えてる?あのカーディガン。 うちの娘は派手だって着なかったのに、初美ちゃんは気に入ってくれて……おばちゃんが選んだものだったから、嬉しかったな」
赤……。
カーディガン……。
パッと頭に浮かんだのは倒れているはっちゃんの姿だった。
それでどれだけ私が救われたか。おばちゃんにはわからないのかもしれない。
同情やお節介で救われる人間がいるということを。
おばちゃんは不思議そうな顔をしていたけれど、少し照れたように笑った。
「初美ちゃんは赤が好きだったわよね〜懐かしい。」
「そうだっけ?」
「ほら、覚えてる?あのカーディガン。 うちの娘は派手だって着なかったのに、初美ちゃんは気に入ってくれて……おばちゃんが選んだものだったから、嬉しかったな」
赤……。
カーディガン……。
パッと頭に浮かんだのは倒れているはっちゃんの姿だった。