KIRINの恋
書類をやり直そうとパソコンに向かったまどかだが、背後に気配を感じて振り向いた。

「わっ!松田さん!な、何ですか!?」

見ると松田がすぐ近くに立っていた。

「その書類これでいいから。」

と言って松田は、先ほどまどかにやり直すように言った書類を取り上げた。

「え?でも変更になったんじゃ…」

「うそだよ」

「うそ!?」

「普通に声かけたんじゃ迷惑かなと思って。」

部屋の周りを見渡すと職員はみんな休憩に行ってしまい、室内には松田とまどかの2人だけが残っていた。

「松田さん他の社員に誘われなかったんですか?」

休憩時間に女子社員が放っておくとは思えなかった。

「そういうの交わすの得意なんだ」

平然と松田は述べた。

部屋には二人きり。

邪魔者はいない。

聞くなら今しかない。

まどかは思い切って聞いてみた。

「松田さん…知ってたんですか?」

「何を?」

分かってるくせに

しらじらしく松田は聞き返した。

「同じ会社だったことです」

「あーそのことね。知ってたよ。城田さん気づいてなかったんだね」

あっけらかんと松田は言った。

「知ってたならどうして教えてくれないですか?」

「知ってると思ったんだよ」

「うそ!適当なこと言わないでください!」



< 18 / 35 >

この作品をシェア

pagetop