KIRINの恋
「これ落としましたよ」
とある日曜日。
いつものように図書館に来ていたまどかにふいに声がかかった。
「あっすいません」
本を借りたときに利用者カードを落としていたようだ。
「ありがとうございます…」
お礼を言おうと相手の顔を見た瞬間。
まどかは固まった。
うわっ。超かっこいい…。
これぞイケメン。
爽やかな笑顔に親切な態度。
恋愛小説のヒーローそのものではないか。
「あの…どうかしましたか?」
固まった様子のまどかにイケメンが尋ねた。
「あ!いえ!あ、ありがとうございます!」
首を横にブンブン振りながらまどかは答えた。
完全に挙動不審だ。
「どういたしまして。それじゃ」
にっこり笑いながらイケメンは去っていった。
あっ。行っちゃう。
せめて名前だけでも…
いや。ダメダメ。
あんなイケメンだもん。彼女くらいいるって。
バカな妄想はしちゃだめだって。