KIRINの恋
あっという間の一日だった。

いつの間にかあたりは夕闇に包まれている。

「そろそろ帰ろうか。付き合ってくれてありがとう」

「いえ。こちらこそありがとうございます」

車に乗り込んだが、車内は無言だった。

松田さん何考えてる?

『これを最後にもう君には近づかない。図書館にも行かない。会社でもただの他人。』

まどかは松田の言葉を思い出していた。

これでいいんだよね。

正しい答えが分からないまま、気づけばまどかの自宅前に着いていた。

「ここでいい?」

「あ、はい。すいません。送ってもらって。ありがとうございます」

それじゃあ、と車を降りようとしたまどかの腕をふいに松田が掴んだ。
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