KIRINの恋
えっ?何?

「本当にこれで終わり?」

まどかの目に真剣に問いかける松田が写った。

「俺とのこと考え直せない?」

掴まれた腕に力がこもった。

「あの…私」

吸い込まれそうな松田の瞳に目をそらすことができなくなった。

徐々に近づいてくる松田の顔。

えっどうしよう!

思わずまどかはギュッと目をつむった。

固まったまま動かないまどかの様子にふっと松田は笑い、静かに掴んだ腕を離した。

「ごめん。さすがにしつこかったな。信用できないかもしれないけど約束はちゃんと守るから」

「あ、いえ…」

なんと言えばいいのか分からなかった。

促されるままに車を降りたまどか。

分かるのは松田がすごくさみしそうに笑ったということだけだった。

今動き出せば何かが変わるかもしれない。

そう思ってもまどかの足は地面に張り付いたかかのように動かなかった。

遠ざかっていく車をただ見つめることしかできなかった。


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