KIRINの恋
それから一週間後のことだった。
いつもの木陰のベンチに行こうとしたまどかだが、そこにいた先客に目をむいた。
「あれ?この間の子だよね?」
そこにいたのは例のイケメンヒーローであった。
うそ。
どうしてここに…
「こ、こんにちは」
はやる鼓動を抑えながら何とかまどかは言葉を発した。
「もしかしてここ狙ってた?」
自分が座っているベンチを指差しながら彼は言った。
「あっいえ、別にそういうわけじゃないんです。どうぞゆっくりしていってください!」
「それはどうも。もしよければ隣どうぞ?」
と言ってまどかの様子にくすっと笑った。
「えっ。あ、じゃあ失礼します」
「どうぞ」
まどかを気に留めることなく彼は、読書を再開した。
何の本読んでるのかな?
気になったまどかはこっそりと彼の手元を見た。
なんか難しそうな本読んでるな。
「ん?何?この本?」
じっと見つめていたまどかに気づき彼が言った。
「あっごめんなさい。何読んでるのかなって思って…」
「推理小説だよ。好きなんだ俺。城田さんは何読んでるの?」
「私は…って何で名前知ってるんですか?」
「あぁこの間カードの名前見っちゃったんだ。ごめん勝手に」
「そんなこと!全然構いません!私はこれです」
まどかは本を掲げて見せた。
「へえ。恋愛小説だね。俺も好きだよ。この作家さん」
「本当ですか!?わぁうれしいな。素敵ですよね。この作家さんの恋愛って。私もこんな恋愛したいなあっていつも思うんですよ」