KIRINの恋
「そ、そうね。よくあるわよ」
見栄を張ったまどかは会社では彼氏もちを演じている。
情けない。
何でこんな悲しいうそついてんだ私!
「ホントですかぁ?」
「いや嘘だね」
割り込んできたのは、同僚の小阪道也(コザカミチヤ)だ。
「あっ小坂くん。」
「美奈ちゃん騙されちゃダメだよ。」
小阪はまっすぐに美奈の所に来て言った。
「ちょっと騙すって何よ?」
「まだHしないなんて男じゃないっすよ。そいつ絶対浮気してますよ」
「うそ…やっぱりそうなのかな…」
愕然とした様子で美奈が言った。
「ちょっと騙してんのはどっちよ!美奈ちゃん信じちゃダメよ。小坂君は万年嘘付き男なんだから」
「失礼だな!城田さん!」
小坂道也。美奈と同じ年のチャラけた男である。
うわさでは美奈を狙っているらしいが、どうやらそれはうわさではなかったようだ。
「俺なら絶対美奈ちゃんを悲しませないのになー。」
横目で美奈をちらちら見ながら言っているが、美奈はその様子に気づいていないようだ。
「まどかさん。私どうしたらいいのぉ?」
「だから、小坂君の言うことなんて信じちゃダメだよ。美奈ちゃん、彼氏と小坂君どっちを信じるの?」
「…たぁくん…」
『たぁくん』どうやら美奈の彼氏の名前らしい。
「じゃあ信じなきゃ。きっと何か事情があるんだよ。ねっ?」