【完】無愛想彼氏




「な、んで…?」

「…順番に、言おうか。

まず、俺にはさ、兄貴がいたんだ」

「お…にいさん??」

「そ。もぅ…いねぇけど。

三年前に死んだ。

俺、兄貴にめっちゃ憧れててさ。

すげぇ、カッコ良くて、大好きだった。

ブラコンだろっ?」

「…」

「…兄貴には、初恋の女の子がいたんだ。

その子は、名前も知らない、もう何年も逢ってない子。

んで、俺が惚れた女の子だった」

翼くんは、懐かしそうにあたしを見た。

まさか…

「桃嘉ちゃんだよ」

「うそ…」

「あの日、砂浜で桃嘉ちゃんと遊んだのは兄貴の方。

俺はそれをずっと見てただけっ!

でも…ずっと忘れられなかった。

優しくて、笑顔がすっげぇ可愛い女の子。

俺が、一目惚れした子。

そんで…兄貴が本気だった子

キスしたのは、蓮と桃嘉ちゃんがキスするの見てさ、

悔しかった…。

言えなくて、伝えられなくて、

もどかしかったんだ。

桃嘉ちゃんとキスできる蓮が、

羨ましかった」


「…」


翼くんは立って、

あたしをそっと抱き寄せた。






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