君を魅たい愛したい
落ち着け…
何も狼狽えることなんてない。
この男は周りの男よりも容姿がいいってだけで、
中身が同じってだけ。
何の根拠もない噂を鵜呑みにしている人達のうちの一人。
いつものように対処すればいいだけ。
私は振り向いて、通常の男が喜びそうな笑みを作り
「だったら、何?」
またいつもの仮面を貼り付けた――
私の名前と年齢ぐらいしか知らない人には作り笑いで十分。
「人の男取っちゃったんだ?んで、何も感じないわけ?」
「えぇ、そうよ」
感じるも何も私から誘ったことなんて一度もない。
声をかけられ着いていってご飯をご馳走になるだけ。
その後はうまく逃げ帰るだけ。
それに、私の外見でしか寄ってこない人達は彼女がいないと言う。
そんな、軽薄な人達なのよ。
罪悪感なんてそんなものあるわけないでしょ?
寧ろ、こんなバカな男に引っ掛かった女の顔を是非拝見したいと思うわ。
「相手は誰でもいいの?」
「そうよ、誰でもいいわ。
私、人選ばない主義なの」
自分でも気持ち悪いと思う笑みを添えて言えば
男も負けないぐらい不快溢れる笑みで
「じゃぁ、俺の相手もしてくれない?」
残念ね。
せっかくこんな綺麗な顔してるのに、中身はそこらにいる男と変わらないなんて。
まぁ…中身まで綺麗な男なんていないか。