超短編 『夢』 5
ただ俺の場合は、証明の仕様がない。

そりゃ、医学的に脳波を測ったりすれば、
そうなのかなぁといわれるかもしれないが。


「先生、俺今まで夢を見たことがないんですよ」

俺はメンタルクリニックの先生にそういった。

「意外と見ていないようで夢は見てるものです。
ただ、見ても忘れてしまうことが多いので、
夢を見ていないと思い込んでしまうんですね」

「気のせいっていうことですか」

「気のせいというか、忘れているという方が正確です」

「では私は夢を見ているのですね」

「ええ、おそらくは見ています。
ある意味で夢というのは脳みその整理時間なのです。
夢を本当に見ないと、精神が不安定になります」

「でも、私はその夢を見たのを覚えておきたいのです」

「ひとつだけ忠告しておきますが、、、」

「何でしょうか」

「夢を忘れるというのは、覚えていたくない。
そんな気持ちの表れの場合もあります」

「そうなんですか」

「非常にまれですが、見る夢をすべて忘れているのは、
その夢がものすごく怖くて、耐えられないので、
防衛本能として忘れていることがあるんです」

「ほんとですか」

「ですから、夢を覚えておく薬もあるのですが、
あまりお勧めはできません」

「しかし、一度くらい夢をみたいのです」

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