無償の想い
「あの、実は武から毎年クリスマスにみんなでパーティーしてるって聞いたんで・・でも、今年は堂島さんも理子さんも独身としては最後のクリスマスだから・・・」

「そういえば毎年そうやって過ごしてたんだよね・・でも、今年は充と二人で過ごそうって話し合ったんだ。充は嫌がったけど私がわがまま言っちゃった」

「そっか・・そうですよね。やっぱりクリスマスって大切な行事ですよね」

「行事って・・たまに麻美ちゃんは面白い言葉使うよね」

大笑いする理子さん。

「そうですか?意識して無いけど私変ですかね・・・・?」

落ち込む私を慰めるように理子さんが言う。

「そんな事無いよ。そういうちょっと変わった所も麻美ちゃんの可愛らしい所だと思うし。悪い意味じゃなくてね」

「褒められてるのかけなされてるのか・・・」

「ごめんごめん。それで?麻美ちゃんは何かクリスマスの予定はあるの?」

「私ですか?私まだ未定です。学生時代の友達と遊ぶかも」

とっさにつまらない嘘をついてしまった。

もし理子さん達が「一緒にクリスマスどう?」なんて言ってくれたらすぐにでもOKしたけど、今となってはそんな期待もするだけ無駄という物。

やっぱり彼女と知り合いの壁ってのは厚くて高い。

「学生時代の友達かぁ・・・最近は会ってないなあ」

「私も社会人になってからはそんなに会う機会もなかなか・・こういう事が無いと連絡も少なくなってきちゃって」

「そんなもんよー。やっぱり学生と社会人ってのは質がちがうもの。どうしても温度差みたいなのは出来ちゃうわよね」

「そうなんですよね。学生の時は気軽に遊んでいられたけど、今はお互いの仕事の事とか気を遣ったり。朝まで騒ぐ事なんてなくなっちゃいました」

「寂しいけどそれも大人になるって事なのかもね。私もそういう寂しい気持ちって分かるなあ・・・」

グラスに入っていたお酒をクイッと飲み干す理子さん。

なんとなく昔を思い出して懐かしんでるような顔をしていた。
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