無償の想い
「そっか。ダメって言われたらどうしようかと思ったよ」

どどどどどーしよー!あの人が来ちゃう!

どんな顔して会えばいいんだろう?

女としてはやっぱりお化粧は直しておかなくちゃね。

「ちょ、ちょっとトイレ行ってくる」

「あぁ」


小走りでトイレに駆け込む私。

胸がドキドキしてる。

こんな事になるならもっと可愛い髪型にして来れば良かった。

今日なんて思いっきり会社用の髪型じゃん。ピアスもダサイし…。

パパッと化粧を直し、席に戻ろうとした時に気付いた。

(何で私、こんなに慌てているんだろう…)

彼には婚約者もいる。結婚が目前なのも知っている。

それに、彼は悩みを抱えていると言うのに私は自分の事しか考えてなかった…

自分を良く見せる事しか…

自己嫌悪になりながら席に戻った。

「突然呼んだりして悪かったな」と武。

「ううん。全然平気だよ」と返す。

悪い事なんて全然無い。むしろ悪いのは私の心だ。

あの人に会えるって事だけで舞い上がっちゃって、そんな事あの人にとっては関係ない事だもんね。
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