無償の想い
第2章

6 緊張

改めて実感する現実。

女の人にとって薬指の指輪は特別な意味を持つ。

地元の友達も結婚した子はいるけど、それほど結婚に対するリアリティを感じた事は無かった。

どこか結婚と言うのは私にはまだ別の世界のような気がして…。

見せ付けられている訳ではないけれど、やっぱり気になってしまう。


「まったく。理子ちゃんと一緒だったら言えよなー」と武。

「悪い、悪い。言うタイミングがなくってさ」と堂島さん。

となりで微笑んでいる宮下さん。

「武が女の子連れて食事なんて珍しいな。明日は雪か?」

と堂島さんがからかう。

「夏に雪降ったら涼しそうだな。ってバーカ!上杉は同じ部署の後輩。たまたま帰りが一緒だったの」

「良い先輩さんだね」と宮下さん。

別に遠慮して黙っていた訳ではないけど、気を使って話しやすい雰囲気を作ってくれた。

私にはそんな気遣いが出来ないのでちょっと凹む。

「おらおら、そんな事はどうでもいいから肉食え!肉!」

と言って武がみんなの小皿に取り分ける。

意外と面倒見がいいらしい。
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