無償の想い
朝から憂鬱な気分になりながら私もデスクに座る。

仕方ない。今日は参加するか…乗り気じゃないけど…。

それでも時間は過ぎていく。

時計の針は6時半を指している。

「急がなきゃ」

と身支度を整えていると武が私の所へ来た。

「早く行こうぜ!」

と笑顔で言っている。

飲み会が楽しみで仕方がないらしい。


二人で予定の居酒屋へと向かった。

居酒屋へ着くともう他のメンバーは来ていた。

適当に空いている席を探して座る。

私はあまりお酒が飲めない。

一応、「乾杯!」のビールくらいは付き合うけどね。

「お疲れ〜!!」

と憂鬱な飲み会が始まった。

会社の同僚達と愚痴を言い合ったり、上司にお酒を注いだりしていた。

なんとか部下として一通りの役目をこなし、やっと自分の席に着いた時だった。


「あれっ?武?」


聞き覚えの無い人の声がした。

私が振り返るとスーツ姿の男性が立っていた。

「おう!久しぶり!」と武が答える。

武は部屋を出てその人と通路でしばらく話していた。

話している内容は聞き取れない。

唯一聞き取れたのは

「また連絡する」

と言った言葉だけだった。

その人の後ろ姿をじっと見る私。

何とも言えない、気になる存在感を残しながら彼は去っていった。
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