無償の想い
一通り注文も終わり、やっと落ち着いて話をする空気になった。

「あの。。私とご飯行ってる事は理子さん知ってるんですか?」

「いや、言ってないよ。言わないとまずいかな?」

「まずい…んじゃないですか?婚約してるとはいえ二人っきりだし…」

「そう言うと思った。大丈夫、ちゃんと言ってあるよ。心配しないで」

(そっかぁ…そりゃそうだよね。変な期待してた自分が恥ずかしいや)

「良かったー。言って無かったら理子さんに合わせる顔が無いですよ」

「本当は理子も一緒にって言ったんだけどね。仕事が忙しくて無理だったんだ」

「そうだったんですか…それじゃ仕方ないですね」

「ま、そういう訳で今日はいっぱい食べてね!」

「じゃあ遠慮なく。いただきまーす」

何か今日の堂島さんは話しやすい。

この前までは何か話しがたい雰囲気だったけど、今目の前に居る堂島さんは何か別人みたい。

「ところで麻美ちゃん、この前のお祭りの件、麻美ちゃんが企画してくれたんだって?武から聞いたよ」

「え?」

「知り合って間もない人の為にさ、麻美ちゃんみたいに色々考えてくれる人ってなかなか居ないと思うんだ」

「そんな…私がお祭りに行きたかっただけなんです」

「そういう所も麻美ちゃんの良い所だね。武が言ってたよ」

「何て言ってたんですか?」

「『麻美は自分の事よりも他人の事を一番に考える奴だ』って」

(そんな事言ってたんだ…)

「俺も確かに麻美ちゃんを見ててそう思ったよ。真っ直ぐで、優しくて」

(そんなに褒められたら顔を上げれなくなっちゃう…)

「そ、そんな!私、全然そんな人じゃないですよー」

「そうやって謙遜する所も良いね」

そう言って笑いながら話しかけてくれる堂島さんも優しい…

こんな楽しい時間を過ごせるなんて思っても見なかった。

「今更ですけど堂島さんは何のお仕事しているんですか?」

「あれ、言ってなかったっけ?はい、コレ」

そう言って渡されたのは堂島さんの名刺。

そこには携帯の番号とメールアドレスが載っていた。
< 59 / 122 >

この作品をシェア

pagetop