無償の想い
「ま、それは追々な。ところで麻美ちゃんは彼氏とか作りたいって思わないの?」

「彼氏ですか…そうですねー欲しいって思う時もあるけど今はいらないかな」

「そっか。でも好きな人とか居ないの?」

(そんな質問…答えられるわけないじゃん…でも、ここで私の気持ちを言ってしまったら…)

さっきまで落ち着いていた心臓がまた騒ぎ出してる。

次の言葉が出てこない。

気持ちを言ってしまおうか。

でも言ったところで何が変わる訳でもない。

自分の気持ちだけを相手に押し付けることになってしまうんじゃないか。

こんな風に告白してしまう事は私の自己満足じゃないのか?

それに理子さんにだって迷惑はかけたくない。

もちろん堂島さんにも…

「い、居ないです」

「居ないのかーじゃあいい人が現れる事を祈って乾杯でもしようか?」

「そうですね。かんぱーい」

いい人は私の目の前…でも手の届かないところに立ってる人。

どう頑張って背伸びしたとしても手が届かない。

でもいいの。

今、私の目の前には好きな人が居る。

たとえ手の届かない存在でも。

こうやって近くで話をしたりする事が出来る。

それでいい。

それだけでいい。

求めたりしてはダメなんだ。

最初から分かりきってた事。
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