無償の想い
「ねえ麻美ちゃん?」

「は、はい?」

「ぼーっとしちゃってどうしたの?さっきから呼び掛けても反応無いし、遠くを見ちゃってる感じだったよ?大丈夫?具合悪い?」

「え?あれ?だ、大丈夫です。ちょっとボケッとしちゃいました」

(あーまた自分の世界に閉じこもっちゃったみたい)

「麻美ちゃんって天然系?」

「…よく言われたりします」

「あ、ゴメンゴメン。気を悪くしないで。悪気とか無いから…」

「いえ、もう10年近く言われてるんで平気です」

「でもその天然さが可愛いんだよなー」

「そうですかね。。ただの変な奴にしか見られない気が…」

「そんな事無いよ。そういう作り物じゃない可愛さってのは誰にでもあるわけじゃないんだし。逆にそういう所も麻美ちゃんの魅力の一つだよ。自信持って!」

「何か堂島さんに言われると自信がついちゃいそうな気がします」

「うん。後ろ向きに考える事なんて無いよ!」

「何か堂島さんって温かい人ですね…理子さんが羨ましい」

「俺はそんな良い人じゃないさ。でもそう麻美ちゃんに言われると嬉しいよ」

と、二人で楽しい会話をしていた時、堂島さんが腕時計を見た。

「お、もうこんな時間だ。楽しくてすっかり遅くなっちゃったね。そろそろ帰ろうか」

楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

よく「このまま時間が止まってしまえば・・・」なんて聞くけれど、まさか自分でそんな事を願うシチュエーションに出くわすなんて。

もう少し、あと少しだけ一緒に居たいなんて言えたらなぁ。でも我慢我慢。

「はい、じゃあ帰りましょうか」

そう言って二人とも席を立つ。
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