無償の想い
と私は笑っていった。

「予想以上に早く終わったな。もう昼だし飯食いに行くか」

「うん」

「何食べたい?」

「何でもいいよ」

「何でも良いって答えが一番男を困らせるんだよなー」

「せっかくお昼時なんだからさ、ランチやってる所行こうよ。ランチ」

「そうだな。じゃあランチやってるトコ探してそこに行こうか」

そういって昼間のオフィス街を二人で歩く。

こんな風に仕事とはいえ昼間から外を歩き回るのは久しぶりだ。

街路樹の銀杏が黄色く色付き始めている。

風も夏場の蒸し暑い熱風から心地よい乾いた風に変わっていた。


「よし、ここにしようか」

そう言ってイタリア料理系のお店に入る。

店内はお昼過ぎのラッシュから一息ついた後とはいえまだまだ込み合っていた。

「あちゃー。混んでるなあ。他のところ行こうか?」

「ううん平気。ちょっと待てば空くよ」

そういって入り口近くの椅子に座る。

数分後、店員さんが呼びに来たので案内された席に着く。

「お疲れ様でした。緊張した?」

と、煙草に火を点けながら武が聞いてきた。

「ちょっと緊張した。武は?」
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