無償の想い
携帯を仕舞い足取りも軽く会社に向かう。

さっきの出来事を思い出しながら電車に揺られる事30分。

見慣れた会社の前に立つ。

「さっさと片付けて帰ろうっと。堂島さんから連絡来ちゃったら困るし」

会社に入ると喫煙所に武の姿があった。

「武!持ってきたよ!」

「おお、悪いな。助かったよ」

二人で部署に戻りながら今日のプレゼンの事を話す。

「何の資料が足りなかったの?」

「これこれ」

そう言って手渡した封筒の中から1枚の紙を取り出す武。

「何?それ」

「これは今日のプレゼンのまとめ資料。これが無いと週明け上司に提出できねーからな」

「じゃあ武は今日やるべき仕事が残ってたって事?」

「まあ家でやろうと思ってたんだけどさ、呼び出しついでに片付けちゃおうと思ってな」

「そうなんだ。じゃ、頑張ってね。私はこれで帰る」

「そうか、届けてくれてありがとな」

「どういたしまして」

「あ、麻美!あのさ・・・」

「何?」

「・・・いや、何でもない。気をつけて」

「?」

何か言いたそうな顔してたけどまあいっか。

時計を見るともう7時過ぎ。

堂島さんからの着信は入っていない。

こんなにも電話が鳴ることを意識するなんて久々だ。
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