ROSE~AI (ノンフィクション
「「こんばんは」」
「こんばんはっ」
三人共、母に軽く頭を下げる。
「上がって貰えば?お母さん今夜も帰れないから、お夕飯でも一緒に食べて行って?ね?」
アタシ達の目の前まで来ると、嬉しそうに笑ってそう促した。
「・・・・あのねぇ」
溜息まじりにアタシが答えようとした時
「お邪魔します。」
「・・・・・・・」
那智が笑顔でそう答えた。
さっきまでの表情は何だったのか・・・
「じゃあ、ほら。ピザでも頼んで?」
そう言って母は、鞄から一万円札を那智に手渡す。
「・・・あ・・」
戸惑う那智に、アタシは半ば呆れながら言った。
「いいよ那智。もらっといて・・・」
「じゃあね。」
そう言って微笑むと背を向けて歩き出す。
カッカッカッ・・・・
足音が響く。
その背中を見送りながら・・・・
思った。
いつからかな。
母がヒールの高い靴を履かなくなったの。
考えた事もなかった
少しだけ
ほんの少しだけど
母の背中が寂しそうで
「ねぇ!!」
気付いたら呼び止めてた
「・・・・・」
恐る恐る振り返る母。
そんな怯えた顔しなくてもいいのに。
「仕事・・・?」
そんな事、聞かなくてもわかる。
「そう。仕事よ?」
母はぎこちないアタシに、細く笑って答えた。
「・・そう。」
「・・・・・・」
「頑張ってね・・・」
消え入りそうな声だったと思う。
母は一瞬目を丸くさせて、すぐに泣き出しそうな顔をした。
「あ・・ありがとう」
そう言ってまた背を向ける。