ROSE~AI (ノンフィクション


「何?」

とっくに帰ったかと思った。


見上げるアタシに、高貴が淡々と言った。


「お前なんか欲しいもんあるか?」

「は?」

何急に。

「だから、何かないのかよ?!服とか靴とか、女ならあんだろ?そうゆうの。」


「・・・・別に。」

特にはない。


「はぁ~色気ねぇなぁ?何かじゃあ叶えて欲しい事とかは?」


力が抜けた様に、その場にしゃがみ込みアタシを見上げる。


追い掛けて来てまで色気がないとか・・失礼な奴


「・・・・・・」



叶えて欲しい事ね・・・

あ・・・・


「・・・・・?」


「高貴のバイオリンが聴きたい。」

「・・・・・」

高貴の顔色がみるみる変わって行く。



「お前・・・それ誰に聞いたの?」


頭を抱えて溜息をつく。


「誰ってわけじゃない」


「・・もう弾けねぇよ。あの頃みたいに・・・」


呟いた声は寂しそうで


「アタシも描けないよ」

気付いたら口に出てた。


「は?」

高貴が顔を上げる。


「・・・・・いや、何でもない。」


「・・・・・・?」

まだ不思議そうにアタシを見てる高貴に、今度はアタシが問う。


「好きな景色とかないの?」


「はっ?」

尚更高貴は難しい顔をしてしまった。

「景色だ!景色!行きたい所でもいい。」


少し考えた後、遠い目をして呟く。

「ニューヨーク・・・」


「ん。わかった。じゃあ練習しとけよ!」

「おいっ!」

高貴が立ち上がって呼び止めたけど、逃げる様に背を向け歩き出した。


言ったもん勝ち。






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