ROSE~AI (ノンフィクション

「ありがとうございます!では、後日また伺いますので。」


ニコッと笑い頭を下げた男に、担当者はたじたじになる。


好感の持てるその端正な顔立ちと、丁寧な口調は、それだけで営業マンの武器になる。


大型のホームセンターを後にして、男は小さくガッツポーズを取った。


スーツにもようやく慣れて、仕事も上手い具合にコツを掴んで来た


証拠にたった今、商談を決めて来た所だ。


営業車に戻って、私用の携帯を確認すると

{新着メール 一件}

男はそのメールに苦笑いを浮かべて、すぐに返信をした。


{今日は暇だし、20時には駅に向かうよ}


営業車の荷台には、商売道具のカー用品が山程積まれている。


職人をやめて、スーツに着替えてから二年がたつ


今時学歴では見ずに、実力があれば認めてくれる今の会社を、男はとても気に入っていた。


あの頃からしたら、随分と視野も広くなった。


給料だって休みだって安定してるし、

少しは気持ちにも余裕が持てる歳にもなった。


早く大人になりたいと願った男は、知らぬ間に立派な、大人の男になった


仲間の中で1番変貌を遂げたのは、きっと彼かもしれない。




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