王子様と秘密ごと
嘘、でしょ。
声すらでない。
体が動かない。
なにこれ、拷問?
まだお金巻き上げられるほうが良かったかもしれない。いや絶対良かった…!
なんて思うけどいまさら遅い。
もうこの状況を打破する策は最早ない。
私に挨拶をした時点で、名前を呼んだ時点で。
もう終わったんだ。
「え、何?遊びだよね天音…?」
甘ったるい声。美人としか言いようがない波岡くんに近づく女の子たちのリーダー桃ちゃんが言った。
信じられない、とでも言いたげな声で。
「まさか。俺遊んだりしないよ」
笑う。あの笑顔で。いつもの王子様の、笑顔で。
嘘だ嘘だ。遊んだりしない、なんて。
だってもう遊ばれてる。
罰が下されてる。天罰が。
歩くんを身分知らずで好きになったりしたからこうなったんだ。
そんな私に下したんだ罰を。
「だってでも…!」
「松岡さんと話してるとこ私見たことない!」
「私もー」
そのとおりです。
昨日初めて話しました。そして二言三言のみです。