王子様と秘密ごと
「ちょっ!どーいう「はい席ついてー」」
みんなが私にいっせいに話しかけようとしたとき先生がタイミングよく教室に入ってきた。
生徒たちはなんて空気読めないヤツなんだと言いたげな表情でだらだらと席に着く。
ああ、よかった…。なんて思いつつパッと顔を上げると右斜め45度の延長線の波岡くんと目が合った。
「(ばーか)」
口パクでそう言ってさっさと前を向く。
気づいたときにはつややかな黒髪とブレザーの上からでも分かる引き締まった細身の背中しかなかった。
…は?
え。今”ばーか”って言いませんでした?
パニックになっている私を尻目に楽しんでいたあの男は、
仕舞いにはばーかという素晴らしく人を腹立たせる発言をした。
馬鹿?馬鹿はお前だろう、絶対絶対…!
なんてこと心の中でしか言えず、シャーペンの芯をボキボキ折るという地味な方法でストレスを発散した。全力で。
「まっつー」