王子様と秘密ごと




もちろん問い詰めることなんてできなくて、


「…大丈夫、だよ」


小さくつぶやいた。



「あの時どうかしてた。俺…「ぜっ、全然気にしてないから…!」」

少し声が大きくなった。

でもざわつく教室の中ではすぐにその声は飲み込まれていく。



必死、だってばれた、かな。



そう思ったのに、


「あれは事故、だよ。
だから何もなかったことに、しよ?」


口から出る出任せ。


自分に嘘をついた。嘘で塗り固めた。

でもそうしないと今にも泣き出しちゃうから。苦しくて泣きそうだから。


なかったこと、なんてできないくせに。




「…でも、…天音」

「あ、…ああ」

そのとき。気づいた。

歩くんは私の気持ちなんかより波岡くんに写真を撮られたことを気にしていた。




だよね。…もしばれたら破局の危機だもんね。

言い聞かせれば言い聞かせるほど虚しくなった。





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